今、世界は格差・貧困の拡大と気候変動だけでなく、新型コロナウイルスによるパンデミックという、未曽有の危機に直面しています。
本研究会は、研究者、超党派の政治関係者、そして多様な市民運動に携わるメンバーが、グリーン・ニューディールによる持続可能かつ公正な社会・経済への転換と、ポストコロナの新しい世界のあり方を研究・提言するため、2020年7月に設立しました。
特に、世界のプログレッシブ(革新的)な政治勢力が掲げる、反緊縮経済理論を背景としたグリーン・ニューディールの研究と海外レポートの翻訳・紹介、そして日本版グリーン・ニューディール政策の作成・提言を行います。
グリーン・ニューディールは、環境と経済の危機を乗り越えるための政策方針で、大きく分けて第1波と第2波があります。
第1波はリーマン・ショックに端を発した世界金融危機を背景に、国連や各国が打ち出した「グリーン」を冠した経済・成長戦略で、その代表例がオバマ大統領が大統領選挙の主要政策として掲げた、再生可能エネルギーへの投資による雇用政策でした。しかし、大統領就任後に実施された
オバマ大統領の景気刺激策は、財政赤字の拡大を批判する議会の抵抗により縮小を余儀なくされ、グリーン・ニューディールも下火となりました。
それから10年後の2018年、新たなグリーン・ニューディールの波が到来します。
それが、反緊縮経済理論に基づいたグリーン・ニューディールです。
反緊縮グリーン・ニューディールは、アメリカ民主党の有力政治家であるオカシオ=コルテスやサンダース、イギリス労働党の党首だったコービン、そしてギリシャの元財相で現国会議員のバルファキスら、世界各国のプログレッシブ(革新的)な政治勢力によって次々と提唱され、大きな反響を呼びました。
反緊縮グリーン・ニューディールは、新自由主義がもたらした緊縮策に対抗し、持続可能な社会・経済構造への転換を迫るだけではなく、大胆な発想の転換を求めるものでもあります。野心的な炭素削減目標や、再生可能エネルギーや省エネルギーの導入目標を掲げる一方、反緊縮経済理論に基づき、税収や財政規律に縛られることなく大規模な財政投資を行うことで、低炭素経済への公正な移行(Just Transition)と、先進国と途上国の格差、さらに所得や富の格差、人種やジェンダーなどをめぐるあらゆる不公正の是正を目指すという、極めて革新的かつ包括的な戦略なのです。