論文・報告書

米国バイデン政権の気候政策「インフレ抑制法」に至る道(朴勝俊著)
論文・報告書 · 02日 10月 2023
2028年、グリーン・ニューディール政策を求める「サンライズ・ムーブメント」の若者たちは、ペロシ下院議員のオフィスを占拠して、気候政策に真摯に取り組むことを要求した(多くが逮捕された)。サンライズ・ムーブメントは大学生が中心の運動で、「誰ひとり取り残さない」ための、GNDを求める運動を展開してきた。かれらの運動を受け止め、具体的な政策として打ち出したのが民主党左派の議員たちである。バーニー・サンダースのGND政策は、15年間で16.3兆ドル(1ドル=140円として、2282兆円)という、大規模な積極財政政策であった。サンダースはこの政策を掲げて、民主党の大統領候補予備選挙に挑戦した。結果は敗退だったものの、この予備選がアメリカの運命を大きく動かすことになる。サンダースたちが蒔いたGNDの種が、のちに米国バイデン政権の気候対策法、「インフレ抑制法」に結実するのである。本稿ではこの「インフレ抑制法」の成立に至る経緯の全貌を明らかにする。

ポリシー・ブリーフ「日本の気候政策の実現可能性と未来」(長谷川羽衣子著)
論文・報告書 · 14日 4月 2022
日本は、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという野心的な目標を掲げた。しかし政府は原子力や化石燃料の選択肢を放棄する気はないようである。また日本の人々の多くは、とりわけ長引く不況で経済的に苦境に立たされている人々は、気候変動は緊急の問題ではなく、エリート層の関心事とみなしている。気候変動政策を実体のあるものにするためには、気候運動を活性化させ、国民にもっと情報を与え、与党に公約を実行するよう求める必要がある。そのためには国際社会が、とりわけドイツのように脱原発とカーボンニュートラルを同時に目指している国々がモデルケースとなり、クリーンエネルギー社会への移行が経済的にも堅実で有益であることを示すことが求められる。 ※この論考は、ハインリッヒ・ベル財団のHPに英語で掲載された論考の日本語版です。

地球温暖化の発見ー真鍋淑郎先生ノーベル賞受賞記念(朴勝俊作)
論文・報告書 · 06日 10月 2021
2021年10月5日、真鍋淑郎さんが地球科学としてはじめて分野の壁を破ってノーベル物理学賞を受賞しました。真鍋さんの「気候モデル」こそ、地球温暖化や長期的な気候の予測を可能にし、パリ協定や再生可能エネルギーの導入につながった重要な研究です。この「気候モデル」に結実するまでには、天文学や海洋学、気象学など幅広い分野の先行研究が存在しました。中には、当時はほとんど理解されず、その先見性が後に明らかになった研究も存在します。地球温暖化はいつ頃から、どのような人々によって「発見」されたのか?その足跡をたどります。 作成・解説:朴勝俊(関西学院大学教授)

バルファキスのグリーン・ニューディールは、ベーシック・インカムで「公正な移行」を支えるー化石燃料産業からの移行による社会経済的な混乱を避けるために
論文・報告書 · 13日 4月 2021
グリーン・ニューディール(GND)は、気候危機と経済危機を乗り越えるために、社会・経済の抜本的な改革を行う政治的アジェンダである。しかし産業構造の転換は、歴史上、多くの「痛み」を伴った。労働者たちの生活状況を、悪化させることのない「公正な移行」が求められる。パンデミックに伴う経済危機と気候危機に直面する今こそ、原子力産業や化石燃料産業からグリーン産業への転換を推進するGNDと、それを支えるユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)が必要とされている。

反緊縮グリーン・ニューディールこそパンデミックからの回復策(長谷川羽衣子著、早川健治訳)
論文・報告書 · 10日 4月 2021
世界は今、大きな転換点を迎えている。この数十年間、新自由主義に則り、財政削減などを推進して来た国々や世界銀行、そしてIMFが、危機に直面したことで一転してケインズ的な積極財政主義に立ち返ったのだ。各国は政府や公共の役割を見直し、財政出動に方針転換せざるを得ないだろう。重要なのは、パンデミックからの回復策と財政出動は、私たちが直面している、格差・貧困と気候変動という2つの大きな危機を克服する物でなくてはならないことだ。その戦略こそ、反緊縮政策に基づいたグリーン・ニューディールなのである。

論文・報告書 · 30日 11月 2020
To cite this article: PARK Seung-Joon, Uiko HASEGAWA and Tadasu MATSUO (2020) “On the Anti-Austerity Green New Deal”, Review of Environmental Economics and Policy Studies, 2020, 13(1), pp. 27-41 Translation: Kenji Hayakawa

論文・報告書 · 11日 9月 2020
『環境経済・政策研究』に掲載された、朴・長谷川・松尾「反緊縮グリーン・ニューディールとは何か」を韓国語に翻訳し公表しました。 요약 2018년이후, 구미에서는 격차나 빈곤의 확대와, 기후 위기를 배경으로 한 반긴축 그린 ·뉴딜(GND)이 잇따라 제안되고 있다. GND는, 환경정책과 경제 정책을 통합시킨 급진적인 정책안이다. 여기에서는 기후변동방지를 위 한 탄소배출 제로 사회에의 이행에 관련된 기존의 제안을 앞당겨 실현하기 위해서, 거액의 투자를 실시 할 것을 촉구하는 동시에, 고용에 있어서 ‘공정한 이행’을 실현할 것 과, 부나 인종, 젠더, 세대 등에 존재하는 불의를 해소할 것을 주창하고 있다. 또한 반긴축 적인 경제이론에 기초를 두고 있으며, 자금 조달은 주로 증세에 의존하지 않고, 연금기금 등을 통한 거액의 민간 자금의 유도와, (통화발행권을 소유하는 각국의 경우는) 적자 지출에서 조달하는 것을 요구하고 있다.

論文・報告書 · 31日 7月 2020
新型コロナウイルスは新自由主義の限界を明らかにした。もはや、新自由主義にすり寄った中道路線や、誤った健全財政主義では危機を克服できない。左派リベラルは、経済回復を約束するグリーン・ニューディールを打ち出し、気候危機と経済危機、そしてあらゆる不平等に立ち向かうべき時である。 ※この記事は、ハインリッヒ・ベル財団香港支局のHPに英語で掲載された論考の日本語版です。財団の許可を得て掲載します。

論文・報告書 · 27日 7月 2020
格差や貧困の拡大と,気候危機を背景として,2018年以降,欧米では反緊縮グリーン・ニューディール(GND)が相次いで提案されている.GNDは,環境政策と経済政策を統合させた急進的な政策案である.気候変動防止のために従来提案されていたよりも,早急に炭素排出ゼロ社会への移行を実現するために,巨額の投資の実施を求めるとともに,雇用の「公正な移行」の実現と,富や人種,ジェンダー,世代などに関わる不正義の解消にも注意を払っている.また反緊縮の経済理論に基づき,資金は主に増税によってではなく,年金基金等の巨額の民間資金の誘導と,(通貨発行権を有する国々の場合は)赤字支出でまかなうことを求めている. https://www.jstage.jst.go.jp/article/reeps/13/1/13_27/_article/-char/ja/

論文・報告書 · 03日 7月 2020
ベーシックインカム(BI)は最低限の生活を保障する現金を、政府が居住者に一律給付する制度です。世界的なコロナ経済危機によって収入が減少した人や、失業した人が急増していることで、再び導入を求める声が高まっています。2017年から2年間にわたってフィンランドで行われたBI導入実験は、受給者の満足度が高まったという結果でした。スペインでは経済危機対策として、生活保護に近いものながら「BI」という名の政策が導入されました。