※記事内の金額の円換算額は、1ドル=135円として換算し、適宜四捨五入したものである。
■はじめに
2022年8月16日にジョー・バイデン大統領は「2022年インフレ抑制法(H.R.5376)」と題された法律に署名した。8月7日に上院を通過し、12日に下院で可決されたものである。2022年インフレ抑制法は、国内エネルギー生産への投資と医療・医薬品コストの引き下げを行いながら、財政赤字を減らし、物価上昇を抑制することを目的とした法律である[1]。再生可能エネルギーの支援なども含むことから「気候対策法」などとも呼ばれているが、これは、バイデン政権が2021年に提出した法案に比べれば、ずいぶん後退したものである。
前回の法案は「経済再建法案(Build Back Better
Act)」と呼ばれ、気候・経済・労働・福祉など様々な対策のために、オリジナル版では約3.5兆ドル(約470兆円)、見直し版では約2.2兆ドル(300兆円規模)を掲げていた[2]。民主党が多数をとっている下院は通過したが、上院で否決された。上院は100議席のうち民主党と共和党が50対50のところ、共和党は全て反対で、民主党から一人でも反対が出れば否決であったが、その反対に回ったのがジョー・マンチン議員(ウエストバージニア州選出、石油・ガス会社から献金を受けている人物)であった。
今回の「インフレ抑制法」は、マンチン議員が賛成できるほどに、財政の規模を縮小し、石油・ガス会社にもチャンスを与えるものとなった。7370億ドル(約99兆円)の財源を調達し、4370億ドル(約59兆円)の総投資をもたらし、財政赤字を3000億ドル(約40兆円)以上も削減すると見込まれている。またこの法律は、メディケア機関に処方薬価格の引き下げ交渉を行わせる一方で、医療安価法(ACA,
Affordable Care Act、いわゆるオバマケア)の拡大プログラムを2025年まで3年間延長するとしている。
さらにこの法律では、国内でのエネルギー生産と送電網構築を促進・支援するための政策が確立されている。その目的として掲げられているのは、消費者の負担を下げ、米国が長期的な排出量目標を達成することを支援することである。
本稿ではInvestopediaのHPに掲載された、ジム・プロバスコ(Jim Probasco)の解説”Inflation Reduction Act of 2022“を参考に、この法律の解説をおこなう。
表1 法律の主なポイント
・ 2022年インフレ抑制法は、バイデン政権が提案した「経済再建法(Build Back Better Act)」の縮小版である。 ・ 民主党によれば米国は10年後までに、インフレ率を下げ、エネルギー生産に投資し、医療費を削減しつつ、3000億ドル以上の赤字削減を実現する。 ・ 法律によれば、7370億ドル(約99億円)の歳入のうち2220億ドル(約30兆円)を、15%の最低法人税の設定によって達成する。 ・ この法律は、米国における気候変動とエネルギーに対する投資策としては、これまでで最大のものとなる見込みである。 ・ この法律がインフレを抑制するかどうかが最大の争点であるが、賛成派は今後少なくとも数年間はそれなりの効果があると言い、反対派は全く効果がないと言っている。 |
出典: 文献[4]より引用、翻訳。
■ 2022年インフレ抑制法の理解
ホワイトハウスによると、インフレ抑制法は「米国史上最大の気候・エネルギーへの投資」を行うものでである[5]。エネルギーコストを削減し、よりクリーンなエネルギー生産を増加させ、2030年までに炭素排出を40%削減することを目的としている[1]。
この法律は、メディケア機関が薬価の引き下げ交渉を行えるようにするという民主党の長年の目標を達成するものであるが、対象となる薬剤の数と、その時間枠には制限が設けられている。それ以外の長所は、薬剤費の自己負担に対して年間2000ドルの上限が設定されたことである。この法案が成立すれば3年間は、何百万人ものアメリカ人に対して、医療安価法(ACA)に基づく医療保険料が引き下げられることになる。しかしこのことは、他の先進国と同様の国民皆保険制度や、シングルペイヤー制度(国民医療保険機関をひとつにすること)が実現したことを意味しない。
この法案に含まれるプログラムの重要な財源は、年間10億ドルを超える利益を上げた企業に対する15%の法人最低税である。一方、年収40万ドル(約5400万円)以下の家庭や、特定の中小企業には新たな税負担を課さない。
米国議会予算局(CBO)と、税制合同委員会(JCT)、そして上院の推計によると、この法案の財源と歳出の内訳は表2の通りである[1]。755ページに及ぶ法律の各要素は、表中の「財源額」と「投資額」の2つの分野のいずれかに該当する。この法律では、支出額よりも多くの財源が得られるため、その差額が赤字削減のために利用される。
米国は、コロナ経済危機時にトランプ政権とバイデン政権によって積極的な巨額の財政支出が行われて経済は回復したが、世界的なパンデミックにともなう供給網の閉塞や、昨年来の、とりわけロシアのウクライナ侵略にともなうエネルギー価格上昇によって、物価上昇率が高まっていた。それによって、健全財政派の発言力も強まっており、このような形での積極さに欠ける財政政策が落とし所となった形である。ちなみに、インフレの原因には企業の市場支配力のよる価格のつり上げなど諸説あるが、有力な経済学者で元財務長官のラリー・サマーズはインフレの原因を積極的な財政・金融政策だとしてそれを抑えることを求めた。これは主流派経済学の考え方であるが、実質的には労働者を失業しやすくすることによって賃金と物価を抑えることを含意するため、異論もある[6]。
表2 10年間の財源額と投資額(単位、億ドル)
<財源額>7370(約99兆円) 2220 法人税最低税率15%* 2650 処方薬価格改革 ** 1240 内国歳入庁(IRS)の税務執行強化 ** 740 億ドル、自社株買い賦課金1% * 520 億ドル、直接税の損失制限の延長 * 7370 億ドル、財源の合計 |
<投資額>4370(約59兆円) 3690 エネルギー安全保障および気候対策 *** 640 医療安価法(ACA)の延長 ** 40 西部地域の干ばつへの対策 **
<差し引き>3000以上 |
出典:文献[4]より引用、翻訳
■ 2022年インフレ抑制法において注目すべき点
2022年インフレ抑制法で最も注目すべきポイントは、以下のようなものである(文献[4]をより引用・翻訳した)。
★ 15%の法人最低税
この法律では、気候変動対策や医療対策の費用に充てるため、企業に対する15%の最低税率が新たに導入される[7]。この税は、年間利益が10億ドル以上の企業に適用される。税制合同委員会(JCT)は、この税により今後10年間で2220億ドルの歳入を上げると試算している[1]。
カーステン・シネマ上院議員(Sen. Kyrsten Sinema、アリゾナ州選出)が「賛成」票を投じる見返りに要求した免税措置は以下の通りである。
・ 新規投資のために加速償却を行う企業に対する免税措置。
・ プライベート・エクイティ企業の子会社である中小企業の除外。
★ 処方薬価格改革
この法律によって初めて、メディケア機関が一部の医薬品の価格交渉を行うことができるようになる。これは、製薬業界の反対にも関わらず、民主党が長年制定を試みてきた政策である。CBOの分析によれば、この条項によって10年間で2650億ドル(約36兆円)の節約になると予想されている[8]。
具体的には、2026年から10品目の高薬価医薬品についてメディケア機関が価格交渉できるようにし[7]、2029年までにはこれを20品目にまで拡大する。交渉を拒否した企業には、その薬剤に最大95%の売上税が課される。法律には、交渉によって決まる特定医薬品の価格に上限を設けることが盛り込まれている。シネマ上院議員を含む「穏健派」民主党員は、価格交渉は古い医薬品にのみ適用するとの条件を挿入させた(大半の医薬品は9年、バイオ薬品は13年)。
この法律では、メディケア対象者の薬剤費の自己負担額を、2025年から年間2000ドルに制限する。
また、メディケア対象者のインスリン費用負担の上限を月額35ドルとする。原案では、メディケア対象者と民間医療保険加入者の両方に上限を設けるとしていたが、共和党は民間保険加入者への保護の拡大に反対票を投じていた。
この法律にはそれ以外の薬剤費上限規制も含まれているが、ほとんどがメディケア対象者に適用されるものである。上院の規則では、これらの条項がどれくらい拡大解釈できるかを制限しているため、民間医療保険に加入している人は、これらの上限規制の恩恵をほとんど受けられない。
さらに、メディケアに対する薬価をインフレ率よりも大きく引き上げた製薬会社は、その差額を政府にリベートとして支払わなければならない、という保護規定もある。
★ 内国歳入庁(IRS)の税務執行強化
2022年インフレ抑制法は、IRSの税務執行強化のために800億ドル(約11兆円)を割り当てる。この法律の支持者は、職員の増員と技術の向上により、IRSが特に超富裕層の不正をより多く摘発できるようになることを期待している[7]。CBOは、これによりIRSの歳入が今後10年間で少なくとも1240億ドル(約17兆円)増加すると考えている[8]。
この法律が成立すると、自社株買いには税が上乗せされる。株式買い戻しに対する1%の物品税によって、2031年までに740億ドル(約10兆円)が生み出されると予想される。
プライベート・エクイティによって失われた税収を取り戻すため、この法律では、企業が税金から差し引くことのできる損失に制限を課している。これらの措置は、富裕層が所得税の負担を軽減あるいは帳消しにすることを防ぐためのもので、最大520億ドルの追加歳入が見込まれている。
★ エネルギー安全保障と気候変動への投資
2022年インフレ抑制法で行われる最大の投資は、エネルギー安全保障と気候変動に対するものである。総額3690億ドル(約53兆円)で、その内訳は以下の通りである[7]。
- 企業インセンティブと税額控除
・ 低炭素・カーボンフリーのエネルギー源を導入するための企業への補助金
・ 風力や太陽光、地熱のエネルギー生産や投資に対する税額控除
・ 蓄電池やバイオガスへの投資に対する税額控除
・ 原子力や、クリーン資源からの水素エネルギー、バイオ燃料、それに化石燃料発電所から排出される炭素を回収する技術への投資に対する税額控除
・ 労働者への賃金と、鉄鋼や鉄、その他の部品の国内製造に基づく企業へのボーナス
※注意:新しい税額控除ルールにより電気自動車(EV)の税額控除が受けにくくなる[7]
・ EVは北米で製造されたものでなければならない
・ ハマーEVや、ルーシッド・エア、テスラ・モデルS、モデルXなどの高価なEV
に対する税額控除を廃止する
・ 米国以外の国からの電池原料を利用した新型EVに対する税額控除を縮小する
- 企業・消費者向けインセンティブ
・ よりクリーンなエネルギーを選択する企業や消費者への補助金
・ 屋上太陽光発電やヒートポンプ、小型風力発電などの住宅用クリーンエネルギー
コストに対する税額控除。2032年まで30%控除、それ以降は段階的に縮小
・ 電気自動車の税額控除は、新車は最大7500ドル(約101万円)、中古車は最大4000ドル(約54万円)
・ 商業ビルのエネルギー効率化に対する税額控除
・ 油田やガス田からのメタンガス排出を企業が削減するための補助金や融資
・ メタンガスを過剰に排出する生産者に課される賦課金
・ クリーンエネルギー技術への追加補助金としての270億ドル(約3.6兆円)
※注意:2022年インフレ抑制法の一部の条項は、実際には公有地での化石燃料生産を増加させるものである[3]。
- 公有地の利用
・ 新規の油田やガス田を開設するための鉱区借用権の販売に対する新たな要件
・ 環境を理由に却下された最近のオフショア油田・ガス田の鉱区借用権販売を復活
・ 来年10月までに少なくとも3件のオフショア油田・ガス田の鉱区借用権販売を内務省が実施するよう求める
・ 公有地および公有水域で石油・ガスを採掘する企業に対する最低権利料の引き上げ
・ 燃料として販売されずに焼却されるか排気ガスとして放出されるガスの、公有地および水域での採掘に対して、ロイヤルティを追加する
- その他の規則
・ 環境正義ブロック補助金に30億ドル(約4000億円)。2026年度まで、気候変動や汚染物質による被害に対処するための地域社会主導のプログラムに対して支払われる(地域社会レベルでの技術支援のための2000万ドルを含む)。
・ 低所得者層の大気汚染モニタリングに30億ドル(約4000億円)以上を、産業汚染源に近接する地域に1億1700万ドル(約158億円)を拠出する。
・ 増加する産業災害現場の浄化に充てるため、輸入される原油や石油製品に対して、物品税を1バレルあたり9.7セントから16.4セントに引き上げる。
・ 石炭じん肺信託基金(Black Lung Disability Trust Fund)の財源となる、石炭生産課税の恒久的延長。この基金は、この疾患にかかった労働者からの請求に対して給付を行う。
★ 医療安価法(ACA)の延長
この法律では、ACAの対象となった人々を支援するための財政措置を2025年まで延長する[7]。この措置がなければ、追加支援は2022年末に停止することになる。また、この規定によって、より多くの中産階級の人々が保険料支援を受けられるように、対象者が拡大された。ACAの支援の延長は、CBOによって640億ドル(約8.6兆円)のコストがかかると見積もられている[8]。
★ 西部地域の干ばつへの対策
インフレ抑制法に最後のところで追加されたのは、米国西部を襲っている旱魃に対する40億ドル(約5400億ドル)の新規資金である。この法律は、同地域に影響を与えている22年にわたる旱魃に対処することを、土地改良局に要請している。
資金は、短期契約あるいは複数年契約に基づいて自主的に水の供給量を減らした農業者に対する補償や、ミード湖とパウエル湖の節水プロジェクトに使用される。また、ソルトン海やグレートソルトレイクなどの内陸水源の縮小による環境影響を緩和させる資金としても役立てられる。
■ IRAが財政および物価に与える影響についての検討
★ 米国議会予算局(CBO)の追加試算
CBOの試算では、処方薬の節約額が新規支出額を上回るため、2031年までの純支出は150億ドル(約2兆円)近く削減される。この計算には、2031年における400億ドル(約5.4兆円)近い削減が含まれる。
またCBOの試算によると、2022年のインフレ抑制法が段階的に完全に導入されれば、正味の税収は年間約20億ドル減少する。またCBOは、医療安価法(ACA)対象者の医療保険料が下がることによる賃金上昇の「波及効果」と呼ぶものも考慮している。
全体としてCBOは、およそ4850億ドル(約65兆円)の新規支出と税制優遇措置に対して、7900億ドル(約107兆円)の財源を見込んでいる。賛成派は、この法案は実際に赤字を削減するので、インフレを抑え、景気後退のリスク軽減策にもなると考えている。
★ ペンシルバニア大学ウォートン校の予算モデル
2022年インフレ抑制法を批判する人がよく引用するのが、ペンシルベニア大学のペン・ウォートン・スクールが行った研究である。ペン・ウォートン予算モデル(PWBM)は、インフレ抑制法によって、今後10年間で累積赤字を2480億ドル(約33兆円)削減し、2031年のGDPには影響を与えないと試算している[9]。
ペン・ウォートンによれば、インフレへの影響は「統計的にゼロと区別がつかない」と予想されている。PWBMは、医療安価法(ACA)の補助金が恒久化されるという代替シナリオも推計した。この(今回の法律に含まれていない)シナリオでは、10年間の赤字削減額は890億ドルにとどまる。
★ 2022年インフレ抑制法はどれだけ財政赤字を削減するのか?
推計された金額は、ペン・ウォートン予算モデルによる2480億ドルから、議会予算局の3050億ドルまでの幅がある。他のほとんどの試算では3000億ドルかそれ以上である。
この法律が財政赤字を削減することについては、削減量に多少の差はあるにせよ、ほとんど議論がない。処方薬のコスト削減は、民主党が望んでいたよりもはるかに少ないが、少なくとも良いスタートであることは誰もが認めている。
★ 2022年インフレ抑制法の課税への影響は?
Tax
Foundationによれば、この法案では、所得40万ドル(約5400万円)以下の家庭には新たな課税を行わないとしている。この法案では、アメリカの救済計画法(ARPA)によって与えられた拡大医療保険料税額控除が2025年末まで延長される。また、この法案では、2022年12月31日が過ぎたあとの課税年度から、利益が1億ドルを超える企業の帳簿所得に対して15%の最低税が課される。
企業や富裕層への増税は一般に好評だが、保守派からは、こうした措置によって影響を受けた企業が投資や雇用を抑制するのではないかと懸念する声もあがっている。
★ 2022年インフレ抑制法は物価上昇にどのような影響を与えるのか?
2022年インフレ抑制法では、法律のタイトルにもなっている「インフレ」に関して、最も議論が集中している。物価上昇への影響は、それを質問するかによって答えが異なる。民主党の上院議員たちは、処方薬やエネルギーの費用の低下により、少なくとも長期的には物価上昇が抑制されると述べている。米国議会予算局は、今年の物価上昇にはほとんど影響がないと見ている。この法律がどれだけ物価上昇を抑えられるのか(あるいは抑えられないのか)について、真のコンセンサスは存在しない。
■ 結論
2022年インフレ抑制法は、米国史上最大規模の再生可能エネルギーの支援なども含むことから「気候対策法」などとも呼ばれているが、これは、バイデン政権が2021年に提出した「経済再建法案(Build Back Better
Act)」に比べれば、大幅に後退したものである。確かに、国内でのエネルギー生産と送電網構築を促進・支援するための政策が確立されている。その目的として、消費者の負担を下げ、米国が長期的な排出量目標を達成することが掲げられている。しかし一方で、公有地での資源開発を可能とし、石油・ガス会社にもチャンスを与えるものとなっている。総投資の規模も大幅に縮小した。「経済再建法案」では、気候・経済・労働・福祉など様々な対策のために約2.2兆ドル(300兆円)の投資を掲げていたものが、今回の「インフレ抑制法」は投資額でいえば4370億ドル(約59億円)にまで圧縮されたのである。
その理由は、上院において、石油・ガス会社から支援を受けるマンチン議員(民主党)がキャスティングボートを握ったためでもあるし、最近の物価上昇に問題意識が集まっていたためでもある。本稿を書く上で最も参考にしたプロバスコは、自身の記事を以下の様に結論づけた:「結局のところ、求めるものを全て獲得した者は誰もいなかったが、少なくともワシントンにおいては、妥協の慣行が滅んでいないことが示された」。
■ 参照
[1] Senate.Democrats.gov. "Summary: The Inflation Reduction Act of 2022."
https://www.democrats.senate.gov/imo/media/doc/inflation_reduction_act_one_page_summary.pdf
[2] Wikipedia (english) Build Back Better Act (accessed on 19. Aug, 2022)
[3] Wikipedia (english) Joe Manchin, Funding (accessed on 19. Aug, 2022)
[4] Probasco, Jim (2022) Inflation Reduction Act of 2022, Investopedia, Updated Aug. 16, 2022
https://www.investopedia.com/inflation-reduction-act-of-2022-6362263
[5] Whitehouse.gov. "Inflation Reduction Act of 2022."
https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2022/08/SAP-H.R.-5376.pdf
[6] Gyauch-Lewis, Dylan (2022) Why Is Larry Summers Engaged in Science Denial About Inflation? It could be his conflicts of interest, The American Prospect, August 11, 2022
https://prospect.org/economy/why-is-larry-summers-engaged-in-science-denial-about-inflation/
[7] Senate.Democrats.gov. "H.R. 5376."
https://www.democrats.senate.gov/imo/media/doc/inflation_reduction_act_of_2022.pdf
[8] CBO.gov. "Estimated Budgetary Effects of H.R. 5376, the Inflation Reduction Act of 2022."
https://www.cbo.gov/system/files/2022-08/hr5376_IR_Act_8-3-22.pdf
[9] Penn Wharton. "Inflation Reduction Act: Preliminary Estimates of Budgetary and Macroeconomic Effects."
https://budgetmodel.wharton.upenn.edu/issues/2022/7/29/inflation-reduction-act-preliminary-estimates