22.05.2020
ビル・マッキベン(プログレッシブ・インターナショナル)著
山崎一郎 翻訳
このパンデミックは耐えがたいほどの痛みを伴うものである。この痛みから私たちができる限りのことを学ばないことは、不謹慎であろう。コロナウイルスのパンデミックは、ある意味で災害に対処するための恐ろしい悲劇的な訓練である、と言える。
これほど深遠なショックには、学ぶべき多くの教訓があるに違いない。そのうちのいくつかは、世界的なグリーン・ニューディールの必要性を外科手術のような精密さで裏付ける。パンデミックは、最良のチャンスなのだ。気候危機に圧倒される前に、私たちが行動を起こすためのショックを与えるという点で。
レッスン1:物理的な現実をごまかすことはできない。ウイルスは価格下落などとは無縁で、交渉に興味がなく、妥協を受け入れない。生物学は限界を設定するが、私たちはその限界を尊重しなければならない。それは、気候変動における物理や化学と同様である。私たちは、トランプ大統領のような「指導者」が、地球温暖化をまやかしと言ったのと同じように、ウィルスを受け流そうとしているのを見てきた。しかし、トランプ大統領が現実を直視することを拒否した結果、必要以上の人々が亡くなったのである。今世紀で最も深刻な現実は、大気の急速な温暖化である。私たちは、これまでの私たちの慣習である現実逃避や中途半端な対策ではなく、真正面からそれに向き合うべきである。さあ、現実を直視しよう。
教訓2:時間が決定的に重要な変数である。韓国のように、問題に直面していることをすぐに認識し、検査を大規模に実施して問題に対処しようとした国もある。彼らは、今や世界共通語となった表現を使うと、「曲線をフラットにする」ことに成功したのである。彼らは確かに混乱に見舞われたが、それは開始までに時間がかかりすぎた国々のような壊滅的な規模ではなかった。気候変動対策との類似性は明らかである。科学者が警告した30年前に始めていれば、炭素上昇曲線をフラットにすることができただろうし、比較的控えめな対策でそれを行うことができただろう。しかし、その数十年を石油会社の言いなりになって無駄にしてしまったため、私たちは今、大規模に、ある意味では混乱をもたらす規模で行動せざるを得なくなっている。これは、悲しいかな、私たちが学び続けなければならない教訓である。もし今動かなければ、温度上昇のカーブはこれまで以上に急勾配になり、登ることは不可能になるだろう。2050年の話はやめて、2021年の話を始めねばならない。だからこそ、今すぐに行動しよう。
教訓3:社会的連帯が絶対的な鍵となる。リバタリアンの考え方が完全に定着するとどうなるだろうか。例として、アメリカを見てみよう。この国の総体的な豊かさにもかかわらず、何百万人もの人々が絶望的な貧困状態にあり、緊急医療に必要な、基本的必需品(例えば石鹸や水)を手に入れることができないでいる。当然、気候変動でも状況はそっくりだ。つまり、最初に苦しむのは無関係な人たちなのだ。グリーン・ニューディールは、気候変動を回避するため必要な技術を開発しながら、公平な社会を構築することを想定している。それが、このような大きな危機に対処するための唯一の方法なのだ。だから、一緒に行動しよう。
教訓4:私たちは必要なときに素早く変化することができる。企業を救済するためなら、文字通り一晩で何兆ドルもの資金を創り出し、それを振り向けることが可能だ。同様に、軍事予算を救済事業に振り向けることも可能なはずである。急速な地球温暖化やパンデミックという現実を前にすると、昔からの言い訳や言い逃れが馬鹿げて見える。実際、今は大きなことをする方がはるかに安全で健全なように思えるし、財政赤字や増税は、うまく機能する社会を手に入れるチャンスに支払うべき、小さな代償に過ぎないように思える。この感覚は、気候変動に対処する場合にも当てはまる。気候変動は、あらゆる手段によって、我々が非常に早く行動を起こさない限り、我々の経済生活に決して埋められない穴を作り出すだろう。だから、本気になってほしい。
新型コロナウイルスの大流行は耐え難いほどの痛みを伴うものであり、その痛みから私たちはできることをすべて学ばなければならない。
<元の記事>
Bill McKibben, The Pandemic Proves We Need a Green New Deal
https://progressive.international/wire/2020-05-22-the-pandemic-proves-we-need-a-green-new-deal/en
<著者紹介>
ビル・マッキベンは、アメリカの環境保護主義者、作家、ジャーナリストであり、地球温暖化の影響について幅広く執筆している。